心配事がある時など、「胃が痛むような」という事がよくありますが、体の様々な器官の中でも、胃は特にストレスの影響を受けやすい器官だと言えます。
適度なストレスで、体は抵抗力を身につける
ストレスは体に悪い影響を及ぼしているだけではなく、適度なストレスを加えることで、体にストレスに対する抵抗力を付けています。
適度なストレスが加わると、胃粘膜の細胞では、「ストレスたんぱく質」が合成され、これが更に強いストレスが加わった時、胃粘膜の細胞を保護する働きをします。
過度なストレスによる身体への影響
人間は過度なストレスに長期間さらされることで、自律神経のバランスが崩れることがあります。
自律神経は身体の内部の働きを適切に保つ働きを持っていますが、そのバランスが崩れることで、血流量が低下し(防御因子の低下)、胃酸の分泌量が増え(攻撃因子の上昇)、胃や腸に悪影響を及ぼすことになります。
ストレスによる胃炎・胃潰瘍の治療法と日常生活
治療は、攻撃因子を抑制するための薬と、防御因子を増強するための薬を併用します。
ただ、ストレスの影響が大きいと考えられる場合は、精神状態を改善するために「トランキナイザー(精神安定剤)」を併用します。
これは、治療だけではなく再発を予防するための効果もあります。
★日常生活の過ごし方★
○ストレスの原因を十分理解しましょう。
生活環境で何がストレスかを把握し、原因に対処したり、
避けることができる場合は、思い切って避けるよう努めましょう。
○疲れをためないように。
十分な睡眠をとり、疲れをためないことが大切です。
○ストレス解消法をさがしましょう。
気楽に楽しめるような、自分なりの解消法をさがしてみましょう。
適度のお酒や友人との会話、カラオケやゴルフ等の趣味 等々。
投稿日:2013.04.26
ピロリ菌とは?
1987年に胃の中で発見されたピロリ菌は、らせん状の形をし、片方の鞭毛を使って胃壁の表面を移動していきます。
ピロリ菌が胃の中でも生息できるのは、自分で作り出す酵素で胃の中にある尿素を中和して、胃酸から身を守っているためです。
<感染状況>
日本の感染率は、先進国でも特に高いほうで、50%以上だと考えられています。 50歳以上の感染率は60~70%を締めており、若年層では感染率が低いようです。 また、慢性胃炎や胃潰瘍の患者さんに限ると感染率は90%以上になるといわれています。
ピロリ菌に感染しても、全ての人が胃炎や胃潰瘍になるわけではありませんが、発症には深く関係していると考えられています。
ピロリ菌が胃炎や胃潰瘍を起こす仕組み
①胃の粘膜の中で生息しているピロリ菌は、ウレアーゼという酵素を分泌します。
②ウレアーゼは胃中の尿素を分解してアンモニアを作り出す。
③このアンモニアとピロリ菌自体が分泌する毒素が胃粘膜を傷つけ、
粘膜の分泌を抑制する。
④更にストレス等が加わると、胃酸の分泌を高めてしまい、
胃粘膜が一層阻害され、胃炎・胃潰瘍が発生する。
ピロリ菌の主な検査方法
◆内視鏡を使う方法◆
①培養法
採取した組織を用いて培養し、ピロリ菌が増えるか否かを調べます。
②鏡検方法
採取した組織を染色して顕微鏡でピロリ菌の存在を調べます。
③迅速ウレアーゼ試験
ピロリ菌が作り出すアンモニアを調べて、ピロリ菌の存在を判定します。
◆内視鏡を使わない方法◆
①ヘリコバクターピロリ抗体測定
血液や尿を採取してピロリ菌に対する抗体の有無を調べることにより、
ピロリ菌に感染しているかどうか調べます。
②尿素呼気試験
ピロリ菌がいると、胃中の尿素はアンモニアと炭酸ガスに分解され、
その炭酸ガスの一部は消化管から吸収され、吐く息にも出てきます。
そこで、印を付けた特殊な炭素が含まれていれば、ピロリ菌に感染
していることがわかります。
これは正確で簡単なため、当院でも多く採用しています。
③便中ヘリコバクターピロリ抗原検査
ピロリ菌の除菌治療
ピロリ菌に感染している人のうち、胃・十二指腸潰瘍及び。ヘリコバクターピロリ感染胃炎の方が健康保険で治療できます。 ピロリ菌の除菌には、下記の3種類の薬を用います。
○プロトンポンプ阻害剤
胃酸の分泌を抑制し、抗菌剤の効きを良くします。
○クラリスロマイシン
抗生物質の1種でピロリ菌を除菌する働きがあります。
○アモキシシリン
抗生物質の1種で、クラリスロマイシンと同じくピロリ菌を除菌する 働きがあります。
※除菌治療では、1日2回これらの薬を1週間服用し、服用終了後4週 間以降に除菌できたかどうかを再検査します。
服用期間の1週間は、薬を中断したりせず、服用スケジュールをきちんと守って下さい。
ピロリ菌の除菌治療の注意点
ピロリ菌の除菌は80~90%の確率で成功すると報告されており、胃・十二指腸潰瘍の再発をほぼ 抑えることができます。 除菌治療を行うにあたっては、次の点に注意しなければなりません。
○副作用
口内炎や味覚障害、下痢、肝機能障害等が現れることがありますが、症状が軽け れば治療は続行します。
○除菌できない場合
除菌不能の原因のほとんどがピロリ菌がクラリスロマイシンに耐性を持っている ためです。
この薬は気管支炎等の治療にもよく用いられるため、これらの病気の治療で
耐性ができてしまっている方が近年増加しています。
○胃が元気になったことによるリスク
ピロリ菌がいなくなると、胃が健康になり、胃酸の分泌がよくなります。
その結果逆に「胃炎・びらん」等を起こってしまう可能性や、
胃酸が食道に逆流して、食道に炎症を起こすことがあります。
胃の不快感がなくなり、食欲が増すので生活習慣病にはご注意ください。
投稿日:2013.04.26
○胃炎
胃の表面を覆っている粘膜が過度のストレスやアルコールの飲み過ぎ、喫煙等が原因となり、炎症(胃粘膜のただれやびらん)を起こしている 状態です。
症状は、「胃痛」「胃もたれ」「悪心」「胸やけ」などです。
○胃潰瘍
胃では食物を消化するために胃液を分泌し、食物を消化しても自分の胃を消化しない仕組みになっています。 しかし、胃潰瘍とは、その胃液が自分の胃を消化してしまい、胃粘膜下層までえぐれた状態です。 症状は「胃痛」「胸やけ」「出血(吐血、下血)」です。
「胃炎」「胃潰瘍」の発生原因
- ①過度の疲労やストレス、睡眠不足
- ②不規則な生活習慣や食生活
- ③喫煙、アルコール、刺激物(カフェイン飲料や唐辛子など)の摂りすぎ
- ④感冒薬、消炎鎮痛剤などの連用
- ⑤ヘリコバクター・ピロリ菌の感染
これらの要因を背景に、食物を消化するためのペプシンや胃酸の分泌と、それから胃を保護する胃粘膜機能のバランスが崩れて自分自身の胃を消化してしまい、胃潰瘍が生じます。
治療法
主に薬物療法で90%以上の改善が期待できます。
胃炎や胃潰瘍の発生する原因は、攻撃因子と防御因子のバランスが崩れることですので、攻撃因子である胃酸の分泌を抑制する薬(H2ブロッカー、プロトポンプ阻害剤)と、防御因子の働きを高める薬(胃粘膜防御増強剤)を使います。
治療後の日常生活の注意点
生活習慣を見直して、心身ともに穏やかに
- ・早食い、飲みすぎ、食べ過ぎを避けて、出来るだけゆっくりよく噛んで食事をしましょう。
- ・食後はゆっくりと。
- ・睡眠、休養を充分とり、体力を回復させましょう。
また、軽い運動などでのストレス解消もおすすめです。
投稿日:2013.04.26