ピロリ菌と胃炎・胃潰瘍の関係
ピロリ菌とは?
1987年に胃の中で発見されたピロリ菌は、らせん状の形をし、片方の鞭毛を使って胃壁の表面を移動していきます。
ピロリ菌が胃の中でも生息できるのは、自分で作り出す酵素で胃の中にある尿素を中和して、胃酸から身を守っているためです。
<感染状況>
日本の感染率は、先進国でも特に高いほうで、50%以上だと考えられています。 50歳以上の感染率は60~70%を締めており、若年層では感染率が低いようです。 また、慢性胃炎や胃潰瘍の患者さんに限ると感染率は90%以上になるといわれています。
ピロリ菌に感染しても、全ての人が胃炎や胃潰瘍になるわけではありませんが、発症には深く関係していると考えられています。
ピロリ菌が胃炎や胃潰瘍を起こす仕組み
①胃の粘膜の中で生息しているピロリ菌は、ウレアーゼという酵素を分泌します。
②ウレアーゼは胃中の尿素を分解してアンモニアを作り出す。
③このアンモニアとピロリ菌自体が分泌する毒素が胃粘膜を傷つけ、
粘膜の分泌を抑制する。
④更にストレス等が加わると、胃酸の分泌を高めてしまい、
胃粘膜が一層阻害され、胃炎・胃潰瘍が発生する。
ピロリ菌の主な検査方法
◆内視鏡を使う方法◆
①培養法
採取した組織を用いて培養し、ピロリ菌が増えるか否かを調べます。
②鏡検方法
採取した組織を染色して顕微鏡でピロリ菌の存在を調べます。
③迅速ウレアーゼ試験
ピロリ菌が作り出すアンモニアを調べて、ピロリ菌の存在を判定します。
◆内視鏡を使わない方法◆
①ヘリコバクターピロリ抗体測定
血液や尿を採取してピロリ菌に対する抗体の有無を調べることにより、
ピロリ菌に感染しているかどうか調べます。
②尿素呼気試験
ピロリ菌がいると、胃中の尿素はアンモニアと炭酸ガスに分解され、
その炭酸ガスの一部は消化管から吸収され、吐く息にも出てきます。
そこで、印を付けた特殊な炭素が含まれていれば、ピロリ菌に感染
していることがわかります。
これは正確で簡単なため、当院でも多く採用しています。
③便中ヘリコバクターピロリ抗原検査
ピロリ菌の除菌治療
ピロリ菌に感染している人のうち、胃・十二指腸潰瘍及び。ヘリコバクターピロリ感染胃炎の方が健康保険で治療できます。 ピロリ菌の除菌には、下記の3種類の薬を用います。
○プロトンポンプ阻害剤
胃酸の分泌を抑制し、抗菌剤の効きを良くします。
○クラリスロマイシン
抗生物質の1種でピロリ菌を除菌する働きがあります。
○アモキシシリン
抗生物質の1種で、クラリスロマイシンと同じくピロリ菌を除菌する 働きがあります。
※除菌治療では、1日2回これらの薬を1週間服用し、服用終了後4週 間以降に除菌できたかどうかを再検査します。
服用期間の1週間は、薬を中断したりせず、服用スケジュールをきちんと守って下さい。
ピロリ菌の除菌治療の注意点
ピロリ菌の除菌は80~90%の確率で成功すると報告されており、胃・十二指腸潰瘍の再発をほぼ 抑えることができます。 除菌治療を行うにあたっては、次の点に注意しなければなりません。
○副作用
口内炎や味覚障害、下痢、肝機能障害等が現れることがありますが、症状が軽け れば治療は続行します。
○除菌できない場合
除菌不能の原因のほとんどがピロリ菌がクラリスロマイシンに耐性を持っている ためです。
この薬は気管支炎等の治療にもよく用いられるため、これらの病気の治療で
耐性ができてしまっている方が近年増加しています。
○胃が元気になったことによるリスク
ピロリ菌がいなくなると、胃が健康になり、胃酸の分泌がよくなります。
その結果逆に「胃炎・びらん」等を起こってしまう可能性や、
胃酸が食道に逆流して、食道に炎症を起こすことがあります。
胃の不快感がなくなり、食欲が増すので生活習慣病にはご注意ください。